住宅ローンを組む際には「団体信用生命保険(団信)」への加入が事実上必須となります。「団信に入っているなら、別途生命保険はいらないのでは?」と考える方も多いでしょう。
しかし、団信と生命保険では補償範囲が異なり、住宅ローン世帯に必要な保障額の計算には独自の考え方が必要です。
本記事では、団信と生命保険の関係を整理し、住宅ローン世帯が必要な保障額を計算する方法を解説します。
団信(団体信用生命保険)とは何か
団信は、住宅ローン契約者が死亡または高度障害状態になった場合に、残りのローン残債が保険会社から金融機関に支払われる保険です。
遺族は住宅ローンの返済義務から解放され、自宅に住み続けることができます。
団信には通常の「死亡・高度障害」型の他に、「がん団信」「3大疾病団信」「8大疾病団信」など、特定の病気でローンが免除される商品もあります。
保険料は金利に含まれているケースが多く、別途負担がないように見えますが、実際には金利の0.1〜0.3%程度が保険料に相当します。
| 項目 | 団信 | 生命保険(定期保険) |
|---|---|---|
| 補償対象 | ローン残債のみ | 死亡保険金(現金) |
| 遺族への現金給付 | なし | あり |
| 生活費・教育費の補填 | なし | あり |
| ローン完済後 | 自動終了 | 保険期間まで継続 |
| 保険料 | 金利に含まれる | 月額数千円〜 |
住宅ローン世帯の必要保障額の計算
団信でローン残債がカバーされるため、住宅ローン世帯の生命保険の必要保障額は「ローン返済額を差し引いた上で」計算します。
【必要保障額の計算式】:遺族の必要生活費(年額)× 年数 + 教育費 ー 遺族厚生年金 ー 配偶者収入 ー 現在の貯蓄 = 必要保障額
例:30代夫婦・子ども2人・住宅ローン3,000万円残。
夫が亡くなった場合を想定。
遺族の必要生活費=月25万円×22年=6,600万円、教育費=2,000万円、遺族厚生年金=月10万円×22年=2,640万円、妻の収入=月25万円×22年=6,600万円(共働き)、貯蓄=500万円。
必要保障額=6,600+2,000-2,640-6,600-500=-1,140万円→ この例では追加の生命保険は不要かもしれません。
ペアローンと生命保険の注意点
夫婦それぞれがローンを組む「ペアローン」の場合、団信はそれぞれ自分の借入額にしか適用されません。
夫が亡くなった場合、夫の借入分は団信でカバーされますが、妻の借入分は妻が一人で返済し続ける必要があります。
ペアローン世帯では、配偶者の借入額に相当する死亡保障を別途持つことを検討しましょう。
例えば各1,500万円のペアローンなら、お互いに1,500万円程度の死亡保障を持つことで万一の際の残債返済リスクを防げます。
保険料を節約しながら必要な保障を確保する方法
保険を選ぶ際は「保険料の安さ」と「保障の手厚さ」のバランスが重要です。
まず家計で毎月無理なく払える保険料の上限を決め(手取り収入の5〜7%が目安)、その範囲内で必要な保障を最大化します。
保険料を抑える方法として、
- ①ネット専業の生命保険会社を利用する(対面型より20〜35%割安なケースが多い)、
- ②非喫煙者割引・健康体割引を活用する、
- ③不要な特約を外してシンプルなプランにする、
- ④複数の保険の重複(過剰保険)を整理する、といった方法があります。
一括比較サービスで現在の保険と他社プランを比較することで、同等の保障をより安く実現できることがあります。
加入前に確認すべき公的保障の活用
民間保険を検討する前に、公的保障制度の活用状況を確認することが重要です。
会社員・公務員であれば、
- ①健康保険の高額療養費制度(月の医療費自己負担に上限あり)、
- ②傷病手当金(病気・ケガで休業時に最長1年6ヶ月、標準報酬の2/3を支給)、
- ③遺族厚生年金(死亡時に遺族が受け取れる年金)、
- ④介護保険(40歳以上が対象の公的介護給付)があります。
これらでカバーできる範囲を把握したうえで「カバーできない部分」を民間保険で補う設計が合理的です。
公的保障が手厚い会社員・共働き世帯では、必要な民間保険の金額が自営業者より少なくなるケースが多いです。
保険の見直しで家計を最適化する:共働き世帯のチェックリスト
保険の見直しでは、以下のチェックリストを活用しましょう。
- ①現在加入している保険の一覧を作成し、保険料・保障内容・満期を整理する。
- ②各保険が「誰の・何のリスク」に対応しているかを確認し、重複や漏れを把握する。
- ③ライフステージの変化(出産・住宅購入・子どもの独立)で必要な保障が変わっていないか確認する。
- ④同等の保障が他社でより安く得られないか、一括比較サービスで確認する。
- ⑤解約や切り替えを検討する場合、「解約返戻金の有無」「新規加入時の健康告知」「保険料の変化」を事前に確認する。
保険料の節約額が月3,000〜5,000円でも年間3.6〜6万円、10年で36〜60万円の差になります。
定期的な見直しは家計改善の重要な一手です。
共働き世帯が陥りやすい「保険の罠」4選
共働き世帯が保険選びで陥りやすい失敗パターンを4つ紹介します。
- ①夫だけに保険をかける:妻もフルタイム就労の場合、妻の収入喪失リスクも同様に考慮が必要です。
- ②貯蓄型保険の過剰加入:終身保険・養老保険は保険料が高く資産形成効率が低いケースがあります。
NISAやiDeCoと比較検討しましょう。 - ③特約の積み重ね:主契約に多数の特約を付加すると保険料が膨らみます。
必要な保障を単体の保険でシンプルに揃える方が割安なことがあります。 - ④更新型保険の保険料上昇を見落とす:10年更新型保険は更新時に保険料が大幅に上昇します。
長期で見ると割高になりがちです。
これらの罠を避けるため、加入前に複数社の比較と専門家への相談を組み合わせることをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 住宅ローン返済中に生命保険を解約しても大丈夫ですか?
A. 団信でローン残債はカバーされますが、遺族の生活費・教育費には生命保険が必要です。
子育て中・子どもの教育費が残っている間は最低限の生命保険を継続することをお勧めします。
子どもが独立し、ローン残債も少なくなった段階で減額・解約を検討しましょう。
Q2. がん団信に入れば、がん保険は不要ですか?
A. がん団信は「がんと診断されたらローン残債が消える」保険です。
しかし治療費・療養中の収入減少はカバーしません。
がんと診断された後の入院・通院費用や収入補填には、別途がん保険や医療保険が必要です。
役割が違うと理解しましょう。
Q3. 住宅ローンを完済したら生命保険も見直すべきですか?
A. はい、住宅ローン完済は生命保険見直しの好機です。
ローン完済により住居費の心配がなくなるため、必要保障額が大幅に下がります。
子育ても終わっていれば、死亡保障は大幅に減額または解約を検討し、老後の医療費・介護費用に備えるシフトを行いましょう。
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保険を検討する前に知っておきたい疑問
保険を選ぶ際に最初に確認すべきことは何ですか?
まず「誰のために・何のために・いくら必要か」を明確にしましょう。保険は目的別に設計するものです。死亡保障・医療保障・老後資金など目的を整理した上で、必要な保障額を計算することが重要です。
保険の見直しはどのタイミングで行うべきですか?
結婚・出産・住宅購入・子どもの独立・定年退職など、ライフイベントの変化時が見直しの好機です。一般的に3〜5年ごとの定期見直しをFPは推奨しています。
保険料が家計を圧迫している場合どうすればいいですか?
まず現在の保障内容を整理し、重複している保障・不要な特約を外すことで保険料を下げられます。公的保険(健康保険・雇用保険・労災)でカバーされる範囲を把握し、民間保険との役割分担を明確にしましょう。
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この記事を書いた人
三上 はるか
FP(2級ファイナンシャルプランニング技能士)・保険ライター
2級FP技能士資格保有。共働き世帯・子育て世帯の保険見直しを専門に、医療保険・がん保険・生命保険・収入保障保険の情報を10年以上発信。
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